ノルン+ノネット感想
2016年05月28日 カテゴリー:感想 タグ:NORN9,アニメ,ゲーム,ネタバレ
2016年冬アニメとして放映された、ノルン+ノネット。
キャラクターは可愛らしく(とくに女の子三人組!)背景美術は美しい。音楽もどこかノスタルジックで心地よい。
世界観もSFとファンタジー混ざった感じで面白そう!と思って視聴してました。
舟と呼ばれる箱庭に閉じ込められた男女混合9人(+α)というシチュエーションは、アメリカのリアリティショー、もしくは日本のあいのり?……などなど連想してしまいますが、それはそれ、これはこれ。
オーバーテクノロジーなロストフューチャーものSF設定が新鮮に感じました。
それで男女が恋愛するなら、尚のこと好みです。
最初は時間ループ系平行世界の運命線がどうの、という世界系乙女ゲームアニメだと思ってました。
作中に西暦を語る文言がありましたが、ヒロインの語る「1919年」と途中から現れた少年の「2016年」というキーワードで、キャラクターたちは未来から来た少年として認識してましたしね。
でも「円形の舟」とかオーパーツどころの騒ぎじゃないし。
その設定は後々出てくるのかなーと、ちょっと期待してました。
全体的にふんわりしたまま、各キャラクターの心情が中心に物語が動いていく。それはまぁ、想定の範囲内でしたが。
まず、キャラクターの名前を把握するのが大変でした。
人によって名前を呼んだり苗字を読んだりバラバラで、しかも姓名がちょっと特殊。苗字なのか名前なのかはっきりしなくて、混乱しました。
どうせなら初回登場時に漢字表記してほしかった。他のアニメでも、キャラクターが多い場合は役職名と一緒に表記されたりして、とても解りやすかったし。
キャラクターの造形は解りやすかっただけに、取っつきにくい印象になってしまいました。
物語としても個人的心情がメインで、世界のゴタゴタはそれを企んだ黒幕親玉潰して終わり。
なのに特定のキャラクターたちに世界の命運が握られちゃって、シミュレーション映像を見せられて、ヒロインの「嫌」波動で破壊。
恋愛としても、きっちり決着ついた組み合わせとバラバラになってしまった組み合わせがあったりして、すっきりしないまま終わりでした。
そして戦争がどうの兵器がどうのと言ってるわりに、科学者の思惑だけで物事が動くとか、舟と同様世界全体もふんわり箱庭でした。
一応第一次世界大戦勃発前になるんだけど、オーストリア皇太子夫婦の暗殺どころか王侯貴族や政治体制に関してもまるっきり無視だったし。
ゲームをプレイしてファンブックを買うに至ってようやく、あの世界に王侯貴族はないものとして設定されていることを知りました。
だったら「トランプ」なんてものは発生しないはずだし、キャラクターがトランプで遊ぶ知識も手に入れられなかったんじゃ?
それに対するスタッフさんのコメントは「そこまで考えてなかった」と言っちゃってるし、細かいことはどうでもいいのかなーと。
でも本来、SF世界を設定するなら、そういう細かい所から詰めるもんなんじゃ?
キャラクターたちが発する言葉遣いや、固有名詞も視聴者側、ゲームをプレイする現実に準じたもので、過去や歴史ものでも、未来やファンタジーものでもないですよね。
とくにゲームは文字を追っていくから、余計に「日本語」と「和製英語」が入り交じる様が見えてしまう。
例えば歴史物なら「カタカナの和製英語」は使わないだろうし、ファンタジーならある程度の造語を駆使して世界観を構築するだろうし。
この世界全体を設定するテクノロジーのちぐはぐさも相まって、更なる不可思議空間になってました。
こういう、「ふんわりSF」設定が気になるか気にならないか、でこの作品に対する相性が決まる気がします。
乙女ゲームだから「ま、いっか」で受け入れられるか、「いやいや、そりゃねーだろ」と拒否反応示すか。
私もアニメだけなら「えー? それで終わりなの?」と思っていたかも知れません。
ヒロインの「こはる」は、かつての恩人が恋人の父親であり、敵の親玉科学者であることも知ります。
しかも息子虐待を止めようとしたら、永遠の愛が手に入るんだから邪魔すんなと言われてしまいます。
でもその時「もし私が死んでも、駆君に人を愛することを止めてほしくない」と言ってましたよね。
この言葉に、とても共感しました。こはる、いいこと言うなぁ。素晴らしい愛情だ!と感極まっていたのですが。
世界を「リセット」した後の「未来」を疑似体験して、皆がばらばらになった上、駆が自分を忘れていることを見せつけられて、「嫌ぁー!」って半狂乱になる。
ちょっと前の感動を返せ!と言いたくなりましたよ。
結局、「リセット」「文明初期化計画」はご破算になり、皆がこの世界で生きていく……という終着点に辿り着きます。
そもそも「リセット」という設定が極端すぎる気がしますよ。
それが作中に何度も行われているというのもびっくり。
どんな状況になっても人は逞しく生きて行くだろうし、再生する力を持っていると思う。
誰かに強制された形ではなく、自力でなんとかなっていくものなんではないでしょうか。
農耕社会を築く一方で、フロンティア精神に突き動かされて未知のものを探ったりと、枝葉が無制限に伸びていくように。
そうした諸々をコントロールして、ゼロから同じような文明を作れるんでしょうかね。言語や文化が、そう簡単に同じものを作っていけるとは思えないなぁ。
本当に文明初期化計画なんてものができたとして、2000年経過してみたら全く違う文明・文化・言語になることも考えられますよね。
そもそも、「どこ」を文明の発生地点に設定してるんだろう?
猿が人になってアフリカ大陸から各地に散らばった当たり?
そもそも、西暦0年ってキリストの誕生を起源にしているだけで、文明のゼロ地点じゃないよ。
その時にはすでにローマ帝国繁栄してたし、その前にはギリシアやエジプトが栄華を誇っていたし。
文明なんてものは人がコントロールできるものではないし、自然発生的にいくつも存在して、互いに影響しあうんだと思う。
例えばエジプト文明が繁栄した後、それが地中海へと飛び火して、ギリシア・ローマが次世代に繁栄したようにね。
それとは別に、エジプトから脱出したユダヤ人たちも自分たちの文明を作ったわけだし。一節によると、ユダヤやキリストの神もエジプトの影響があるらしい。
エジプトは多神教だけど、一時期一神教にまとめようとしたことがあって、国が分裂し混乱した。やがてそれがユダヤ教、キリスト教にも影響した……とか何とか。
そういう諸々を島の科学者だけがコントロールできるもんですかね?
しかも「王侯貴族のような階級社会を作らない」ことを前提に?
それで西暦は8000年以上経ってる???
この辺りをツッコミだすと、フィクションをフィクションとして楽しめなくなりそうだけど、もうちょっと何とか……。
せめて「え? 一言も地球とは言ってないよ?」と曖昧にしておけば良かったのにね。
例えばガルパンも、スーパーバイザー御本人が「うん、地球とは一言も言ってないから」って言い放っていたし。
女の子が重たい砲弾を持って装填していても「地球じゃないから重力も違うかもしれないよね」とか何とか。
だから正確な世界地図は出てこないし、学園艦がどこを航行しているのかを明言していないんですよね。
「大洗」という街だけは正確に描写しているけど、他はわりと曖昧。
でも話は面白くて引き込まれました。
ノルンも「地図」なんて出さないままにしておけば良かったのに。
アニメにはしっかり出てましたよね。単なるイメージ図として出したのかな。
上海やトルコっぽい街は出て来たけど、「地球じゃないから、あくまでモデル」って言い張るくらいの度胸を貫いてほしかった。
(ゲームでは大陸移動しまくってごちゃごちゃになった絵があったけど、あれで良かったのに)
こはるの「愛することを止めてほしくない」という台詞にとても共感したように、地に足をつけた生き方を貫いてほしかったなぁ。
とはいえ、一度は両想いになった恋人が次の人生で自分を覚えてないと知ったら、絶望する気持ちも解る。
半狂乱になったのはどうかと思ったけど。
しかもそのことで、「リセット」できなくなるし、「アイオン」壊れちゃうし。
結果的に「強制的にリセット回避」になったわけで、話し合いも何もなかったことが残念だったなぁ。
最後にちょっともやもやしました。
駆とこはるがくっついて、ハッピーエンドになったのは良かったけどさ。
あと、暁人と七海がくっついたのも良かった。
深琴が朔也のもとを離れて夏彦についたのは、ちょっともやもや。
でも、深琴と夏彦って「恋人」というより「同僚」って感じがする。
同じ目標を持って協力し合う「同士」? 「コンビ」?
結婚するなら朔也の方が良さそうなのになぁと思ってしまって、やっぱりちょっともやもや。
そういう「もやもや」が、逆に「原作ゲームをプレイしてみたい」という動機に繋がりました。
アニメ、最初は「いいな」と思ったし、何度見返しても「音楽がいい」「絵がいい」と思えるし、途中までなら話の流れも好き。
だったら原作ゲームとアニメの違いをこの目で確かめてやろう! と思ったわけです。
しかもヒロインは三人で、それぞれ攻略対象も限られている。
乙女ゲームなら大概ヒロイン一人で、友人キャラの女の子がいて、あとは攻略対象の男子組、というパターンが定番です。
攻略対象9人と言われたら、ヒロイン一人でそれぞれ攻略するものと思い込んでしまいます。
が、ノルンはヒロイン三人に男子三人を振り分けて、それぞれ限定している。
それが逆にとてもいい設定だと思えました。
あんまり色んな組み合わせが乱立してもプレイが面倒だし、時間かかるばかりで途中で投げ出しそう。
それなら、ヒロイン三人に分けてくれた方が、話も新鮮になってプレイしようというモチベも保たれるんじゃないかと。
実際、プレイしてその通りでした。
こはるは乙女ゲームでは標準的なヒロインですが、それで九人全員落とせと言われたら苦行だったと思う。
駆、千里、正宗の三人だからこそ、恋愛物語に没頭できました。好みは分かれるかもしれませんが。
深琴なら朔也、夏彦、一月。七海なら暁人、ロン、平士。それぞれの物語がとても魅力的で、しかも平行して存在しているのがいいですね。
アニメでも基本、組み合わせになる男女は仲良かったり、チーム組んでたりしましたね。
例えば一月は女ったらしで七海やこはるにも優しいけれど、何かというと「お嬢さん」が第一だったし。深琴に対する態度と、七海こはるに対する態度では明確な違いがありました。
一方で平士は誰に対しても人懐っこいし、ロンは誰に対しても無関心。なので最初は七海のお相手だとは解らなかったけれど、ゲームで攻略対象と知り、好奇心擽られました。
何より興味をひくのは、ヒロイン一人を選ぶ裏側で別の物語が進行していること。
こはるをプレイしていると、並行して七海、深琴の恋も進展しているようで、それが気になるんですよね。
しかも、自分でプレイしている時の物語と、脇キャラに回った時の物語が全く違う様子。
駆とこはるの裏側で動いているロンと七海の物語も、七海をメインにした時のロンの物語とは違う。深琴と朔也はもとから幼馴染みということもあるけど、話のパターンがちょっと違う。
深琴の夏彦ルートはかなり特殊なので外すにしても、一月との関係も深琴メインと脇とではかなり違って見えました。脇の方が、朔也と一月と深琴で三角関係っぽいやりとり多かった気がする。
七海メインで暁人を選んだ場合も、こはるは駆と千里の三角関係になってるっぽくて、すごく気になる。
どんな話が展開しているのか、興味をひかれましたね。
こういうの、二次創作で見てみたいなぁ。
見られないとしたら自分で書いてみたいかも。
そんな妄想欲みたいなものも適度に擽られて、全員プレイし終わる頃には大いにハマってました。
なんだ、ゲームはアニメとまったく違うし、これはこれで楽しいじゃん!と。
相変わらず世界設定はふんわりしていたし、無事にENDを迎えたとしても「もやもや」が残っている場合もありました。
ヒロインは全員それぞれ個性的で好き。
攻略対象男子九人は、好き嫌いが分かれてしまった印象。
男子は千里、暁人、一月、夏彦が好き。駆、ロン、朔也はまぁまぁ。平士と正宗はちょっと……。
ヒロインとの恋愛物語として凄く好きなのは、一月、夏彦、ロン、暁人、千里。
脇キャラとしてなら嫌いじゃないけど、メインの恋愛になった途端「コイツ駄目だ」となったのは平士と正宗。
その辺り、個別キャラに関してはそれぞれ語りたいです。
物語のキーである「リセット」や、能力に関する扱いもそれぞれのルートによって異なりました。
一度プレイしただけでは頭に入らず何度でもプレイしたくなるし、こうして感想を書いている間にも確認のために何度もアニメ見て、ゲームも起動してました。
妄想から二次創作書くとなると、もっと色々チェックしないと駄目っぽい。
ノルンはこの辺りが癖になりそうですね。
絵も書きたくなるし、妄想もしたくなるしで、なかなか侮れない作品でした。