『ジキルとハイド』 ニクス×アンジェ

ゲーム中・シリアス・両片想い

 

この身体には二つの魂が宿っている。
世界を愛し、憂い、女王の即位を望む篤志家としての自分。
全てを破壊し、呪い、女王を滅せんと目論むエレボスに憑依された自分。

解け合うことなく自我は入れ替わる。
己の内より溢れ出す漆黒より黒い闇を幾度となく握りつぶそうとするのに、指の隙間から零れるように滲み出でてしまう。

生きることを渇望するが故に、この身は常に死がまとわりつく。
生きとし生けるもの全て、生まれ落ちた瞬間から死は約束された未来だ。いかに生きるか。それを命題に哲学者は様々な論説を繰り広げる。
なのに、何一つこの身に響かない。

私は、罰せられ、滅ぶことを望む咎人。
女王陛下の下す断罪に喜んでこの身を捧げよう。

ああ、それなのに。
運命はどこまでも残酷で、非情。

「ニクスさんは、私を傷付けたりしません!」
女王の卵は、私を罰し滅ぼす存在は、どこまでも済んだ瞳でこの身を心ごと射抜く。

生きることを望み、死に取り憑かれ、人の欲望はどこまで膨れあがればいいのだろう。

清らかで愛らしい貴女を、気高いその精神を踏みにじり、汚れを知らぬ身体に所有の刻印を刻みつけてしまいたいと願う自分は、一体どちら側なのだろうか。




【終わり】

初出:2008/11/01

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