衛藤×日野

恋人未満・ほのぼの

 

いつもやられているから、やりかえしてみた。
ただそれだけで、別に怒らせるつもりはない。
喧嘩したくてやったわけでもないのに、彼は眉間に皺を寄せている。

「なんでダメなの?」
「いいからダメ!」
「なんで? 衛藤くん、いつも私にやってるじゃない」
「俺がやるのはいいけど、香穂子がやる時は許可してから!」
「何それ」

彼の主張は理不尽で、納得がいかないとばかりに上目遣いに睨む。
すると彼は顔を手で覆ってそっぽ向いた。

「あのな、今はもう夏で、互いに薄着だろ」
「うん」
「それで背中にくっついてきたら、……色々あるだろうが」
「……?」

彼の耳が赤いと気付いて瞠目する。驚いている間もそれは頬全体へと広がった。
あれれ?
日野香穂子が小首を傾げる。
腹を括ったように向き直り、衛藤桐也は特大の爆弾を落とした。

「……胸があたるのは、わざと? 俺を試してんの?」





【終わり】

初出:2009/07/08

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