Fan fiction＊short

火原×日野

恋愛未満・ほのぼの

雑誌や漫画やドラマや映画その他諸々、様々なメディアに掲載されたモデルケースは数限りなくあった。
それらを徹底的にシミュレーションして頭に叩き込み、何度も反芻してきたはずだ。

「おはようございます、火原先輩！」
「香穂ちゃん」

なのに、顔を見たら全部が全部ボロボロと崩れていく。

「えっと、それじゃ行こうか」
「はいっ」

手を繋ぎたいのに、いきなり手を繋いじゃったら驚かれるだろうか。
今の自分は、手も背中も汗びっしょりでみっともない。

掌をシャツに擦り付けるけれど、彼女までの距離を埋められないでいる。
モデルケースもサンプルも、本物が目の前に居たら何の役にも立たないものだと、火原は内心がっくり項垂れた。

【終わり】