大地×かなで

3ゲーム中・両片想い

 

花びらで占う恋模様』大地Side


言わなければ良かったかな、なんて今更ながらに後悔する。
それは大概彼女が恥ずかしそうに視線を逸らす時で、赤い頬に困ったような表情を浮かべられると、どうしようもない。
俯いた時に晒される白い項やセーラーの襟首を、どんな目で見ているかなんてきっと彼女は想像したこともないんだろう。
彼女自身、視線を向けられていることは多少なりと意識しているようで、少し逃げるように俯く横顔が時折どきっとするほど艶めいて見える。
髪をかき上げるしぐさとか、白く細い指先とか、対照的な赤い頬とか。
恋に不慣れな様子なんて一目で判る。
だから本気の恋にする予定じゃなかったし、告白まがいの台詞まで吐き出す羽目に陥る事態は想定していなかった。
他の誰かが彼女に好意を持って近付くなんて想像を、たぶん無意識のうちにシャットアウトしていたのだろう。
一度でも想像していたらきっと自覚はもっと早かっただろうし、岡本への対応も穏便なもので済んでいたかもしれない。
それを避けていたのは想像して得るだろう傷を先送りにしていた結果だ。
きっともうずっと前に本気になっていた。それに気付かないフリで蓋をしていた。全くの無意識のうちに。
そうしている間にも恋に冷める日がくるかもしれないと楽観と悲観の狭間で現実の落とし所を模索していた。
一時の夢で終わった恋なら傷も浅くて済む。可愛い後輩のままで大切にしていられる。
例えば彼女が他の男を見ていても、笑って背中を押してやれるくらいには。

なのに、自分じゃない他の男が彼女に告白した場面を目撃しただけで理性はあっという間に崩壊する。
予定調和は机上の空論。
幾つも用意したはずの予防線が呆気なく瓦解し、みっともないほど本音が溢れ出る。
あれ以来、彼女との間に微妙な距離が生まれてしまった。
真っ赤に染まった顔と恥ずかしげに視線を逸らす表情を見せられて、胸がずきりと痛む。
困った顔をされたら何も言えなくなる。
恥ずかしがらずにまた前のように真っ直ぐな目で俺を見てほしい、なんて贅沢なんだろうか。

「好きになって」なんて言わないからせめて。
前のように笑っていてほしいなんて、虫がよすぎるだろうか。





【終わり】

初出:2010/04/12

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